中小企業向けの「賃上げ促進税制」とは? 控除率最大40%で節税対策!

5月半ばとなり、各企業に新入社員が入社して、ようやく新たな環境に慣れ始めたころではないでしょうか。今回は、そんな新入社員にも関係ある「賃上げ促進税制」について紹介したいと思います。

令和4年3月22日に可決された「賃上げ促進税制」は、特に中小企業に対しては優遇された内容となっています。具体的にどんなものなのか見ていきましょう。

そもそも賃上げ促進税制って?

賃上げ促進税制とは、従業員の給与支給額が前年度より多くなった企業や個人事業主が税額控除を受けられるという制度です。令和4年度の税制改正で、中小企業に対して、前年度と比べて給与支給額が1.5%増加した場合は15%、2.5%増加した場合は30%の税額控除が可能となります。しかし、前年度の数字がない企業の場合だと、今回の賃上げ促進税制の制度が適用されません。大企業と比べた時に中小企業の方が割合が大きくなっているため、中小企業にとってはより良い制度となっているのではないでしょうか。

企業側に与える影響

節税効果がある

法人税控除で節税効果が得られます。要件を満たせば、雇用者全体の支給額の増加分については、最大で40%の税額控除を受けることができます。これによって、従業員の給与が増えたとしても、控除分の負担軽減に繋がり、コスト削減が可能です。

教育訓練費を受け取ることができる

今回の賃上げ税制に追加された要件として、教育訓練費に関することもあります。労働者のキャリア形成にむけての教育訓練を促すことで、高い技術を持った人材や知識豊富な人材の確保のための人材育成にも活用することができます。

資金繰りが厳しくなる可能性がある

賃上げ税制は、法人税の税額控除に限定されたものになるので、法人税額の納金が少ない企業の場合だと給与支給額の増額によるコストが増えます。経営状況次第では、要件を満たそうとして資金繰りをかえって厳しくしてしまう可能性があるので注意が必要です。

労働者に与える影響

給料やボーナスの増加が期待できる

今回の税制は、大企業は継続雇用者、中小企業は雇用者全体の給与支給額の増加を要件にしているので、企業は従業員の給与やボーナスを上げるか、もしくは雇用人数を増やすかのどちらかで要件を満たさなければいけません。

賃上げ促進税制のデメリット

赤字企業だと、制度が適用できない

そもそも法人税というものは、赤字の企業だと納めなくていいようになっているので適用できません。結局のところ、黒字経営かつ大きな利益がある企業でないと、今回の制度が全く関係ないものになってしまいます。

国税庁のデータだと、日本の企業の約65%が赤字で法人税を納めていない、というデータがあるのでたとえ従業員の給料を増やしたとしても控除を受けられるというわけではありません。赤字経営の企業にはなんのメリットもない制度になってしまいます。

制度が終わったあと、一旦上がった給料を下げるのは難しい

給料が上がることはいいことかもしれませんが、逆に上がった分だけ引かれる分も増えることになるので、これが継続的に続くかといわれると中々そういうわけではないかと思います。会社自体の収益が上がって、それに伴って給料を上げられる環境を整えるのも必要だと思うので、これからの課題になるかもしれないですね。

賃上げ促進税制の申告方法

まず、方法を紹介する前に、そもそも賃上げ促進税制は青色申告事業者に対しての制度になるので、白色申告事業者は適用できず、青色申告を申請しても適用を受けたい事業年度には青色申告事業者でないと適用できないことになっています。さらに前年度との給与等支給額の増加分があることが前提なので、前事業年度が存在しない新規設立の事業者は制度が適用されないので注意が必要です。

この税制を利用するための事前申請や認定は必要ありませんが、法人税額から控除を受けるためには法人税の確定申告書提出の際に、いくつかの書類を添付しなければなりません。(以下参照)

  • 法人税申告書
  • 適用額明細書
  • 対象者の給与等支給増加額や控除を受ける金額などを記載した明細書
  • 今日一句訓練費の上乗せを申告するときは実施時期や受講者、支払い証明などを記載した書類

これらの内の必要書類を添付した上で、確定申告書に法人税の税額控除分を反映させて、管轄の税務署に提出しましょう。

まとめ

今回、紹介した賃上げ促進税制は、税額控除最大40%となっていて節税効果がとても高いです。中小企業にはもってこいの制度ですが、賃上げとなると企業にとっては固定費の増加につながるので、短期的ではなく長期的な視点での考慮をする必要があるため注意が必要です。

実際に申告する場合は、管轄の税務署にしっかり確認した上で適用するようにしましょう。

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